《MUMEI》 駆け引き「・・・・貴方への信頼を否定させるおつもりか? 嫌いになれと? 分かっておる。 この世界、良くあることじゃ。 ただそれだけのことと割り切れぬ程の馬鹿ではない。 行って・・・ 真実の愛を探すと良い。 私は所詮、なぐさめでしかない女。 承知の上で会っておる」 そうして私は何やら奥の引き出しから取り出した。 その大きなふろしきを解くと、キラキラしたものが見える。 お金のような・・・ 宝石かと思われる物が覗いた。 「これは貴方からこれまでいただいたものじゃ。 このような大切なもの、どうして簡単に使えよう? これを今日、全て持って帰っておくれ。 本当の愛のある場所で・・・本当に愛する人へと渡すのじゃ。 私が最後に出来ることはこれくらいしかなくてなぁ。 幸せを願っておる。 私は貴方を忘れるじゃろう・・・。 それがな、これまでの礼じゃ」 そういってふろしきを包み直し、男へと差し出した。 「これは・・・!!!」 小さな、アクセサリーらしきものへと手を延ばした。 「私が最初に貴女に渡した貝の耳飾ではないか!? ・・・とってあったのか? 貴女に会うだけで精一杯で、お金もなく、こんなもの すぐに捨てられるものと分かっていながら、恥を忍んで 渡したものなのに・・・。 ずっと持っていたのか・・・」 「何を言うか。 一番の宝物であった。 ・・・ 今日まではな」 男はそっと耳飾を置くと、再び激しいキスをしながら 整えた衣服を緩め、上へと覆いかぶさってきた。 「あぁ・・・ 何故じゃ? ん・・ 止めるのじゃ! 此処ではないと… 知ったであろう? 恥をかかすでない。 ・・止め・・・ んっ やめ・・・ あぁ、 あぁ」 凄いスピードで押してくる。 その瞬間を誘導するように、私も声が大きくなる。 まるで本能しかなくなったような2人・・・。 喘ぎながら、あまりにも冷静な判断が脳裏を過ぎった。 『--- この角度が一番、男の心を掴む ---』 のけぞり、首を微妙に傾けながら眉を潜め、まぶたを 痙攣させながら声を詰まらせる。 次の瞬間、野獣のような男の動きは止まった。 前へ |次へ |
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