《MUMEI》
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洋式のトイレだったから、
俺は蓋を閉じた便器に座らせられてた。
秀一も俺の上に跨がってる
…なんか…変に恥ずかしい。
その秀一はキスをしながら俺の胸を弄ってる
その行為は気持ち良いと言うより、くすぐったいだけ
でも秀一の指から伝わる熱と
キスの間から漏れる息に、俺は興奮してきた
…なんだか悔しい
だから俺は、キスを躱して秀一の耳を甘噛みした。
「…!……ぁう…」
その反応は予想以上。
秀一の肩がビクっと跳ねて、
全身が一瞬強張る
…へえ…?
「…やめろよ…俺、くすぐっ……んっ…!」
耳に唇を触れさせるだけで、 大袈裟に逃げる秀一が愛しくて
身長だって俺と同じくらい、長身の類い。
…男なのに
可愛いと感じてしまうのは、
………病んでる
俺はこいつに、病んでるんだ…
…と、
「…あ、秀一」
俺はある事を思い出して、悪戯を止めた
「人…来たりしなかったよな……」
「………」
秀一はギュッと閉じていた眼を開いて、
一瞬キョトンとした表情で俺を見つめた
「…ああ」
でも、すぐにズボンのポケットから銀色で平べったいイルカの形の何かを取り出した。
「…なんだ、それ」
「ここ《トイレ》の前に、センサー落としといたんだ」
「こ…個室の前?」
それじゃあ意味が無い
「馬ぁ鹿。」
秀一いわく、
個室の更に一段階外
俺を引っ張って来た時、『トイレ』って書いて有る板の下辺りに、光を感知するセンサーを落として置いたらしい。
形はサイコロそっくり
何かがセンサーに自然に当たる光を遮ると、
秀一が持つイルカが『ピッ』となるそうだ。
用意周到なこって。
話を聞いてる間に寒くなって来て
「っくしゅん!」
くしゃみがでた
「あ…ごめん。」
そしたら秀一は妖艶さを感じさせる微笑みで、言った
「今度こそ、暖めてやるから…」
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