《MUMEI》

さっきからこういった着物の女性達が忙しそうに走り回っているのを見て疑問に思っていたのだが、男性のポーターとかは居ないのかとアキラに聞いてみたらちょっと悩んでから『…こういうものなんですよ』と言っていた。

こんなに小柄な女性なのにさっきはポーターのように荷物を持ってくれようとしていた、別に可愛い日本人女性を探していたワケでは無いのだが、つい目が行ってしまう。

アキラも初めて出会った時はホテルのスタッフだった事を思い出してしまった。

荷物を整理しているアキラの後ろ姿を眺めながらそんな事を懐かしく思い出していると、双子がさっきから窓の外を眺めたり忙しなく部屋の中をウロウロしては部屋のベランダにある露天風呂に手を付けてはお互いに掛け合ってキャッキャとはしゃいでいた。

「そちらのお風呂の他に露天風呂もありますので」
「そうなんだって、はるちゃんそっちにも行こうよ!」
「そうだな」

今度は双子がアキラが持っていた着物に興味を示したようで、はしゃぎながら紺色の長い紐状の物を伸ばしたりそれを見よう見まねで羽織ったりしていた。

この薄手の着物は”浴衣”というもので、以前調べた所によると風呂に入った後に着る、いわゆるバスローブのようなものらしい。

この前の夏祭りでは外着にもなっていたが、確かに蒸すような暑さのこの国では丁度良い衣装なのかもしれなかった。

双子はと言えば、和服のスタッフの女性がお茶を煎れる様子を興味津々と見つめていた。


「さっきの女性は…こっちのメイドみたいなものなのか?」

自分も浴衣に着替えると、先ほど煎れて貰った日本茶を頂きながら着替えているアキラに話しかけた。

「え〜…そうですね…メイドさん、かもしれませんね」

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