《MUMEI》

体育館の上に放送部の面々が見えた。


人気がないからこのまま連絡してしまおう。




電話をかける。




出ないな…………




体育準備室で誰かが歌っていた。違う……着うただ。

音源へと近付いて行く。


扉の隙間から水瀬の後ろ姿が見えた。




「じろー……」
七生と目が合った。




    さいあく



信じたくない。七生と水瀬がキスしてたなんて……

情報処理能力がまだ機能してない。
どこまでも走りたくなった。扉を目一杯閉めて逃げるように体育館から出ていく。廊下でけっつまづいた。

惨めだ……泣きそ……。
床が冷たい。


「待てよ!」
不覚にも七生に追いつかれた。


「待たない、お前には見損なった!
終わりだ終わり、七生とは絶交だ!」
咄嗟に手が出た。思いっきり七生の左頬を殴ってやる。




花火の音が耳鳴りして眠るまで離れなかった。

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