《MUMEI》
田所さん
 太陽がさんさんと大地を照らす中、私は畑と畑の間を延びる道を歩いていた。

「はぁ…」

 両親の仕事の都合で、都会からこんな田舎に引っ越してくることになって、私の心は超ネガティブ。
 両親は新しい家で荷物の整理をしているが、私はとてもじゃないがそんな気分にはなれない。誰か私の今のこの状況を嘘だと言ってほしい。
 というわけで、ぶらぶらと散歩と洒落込んでいるわけだ。

「ほんとに何もないわね、コンビニすらないなんて、ほんとどうかしてるわ」

 あるものと言えば畑と家くらいだ。
 どこまで行ってもこの光景が続くんじゃないかと思うとぞっとする。

「やぁこんにちは」

 不意に声をかけられた。
 男の声。近くに人がいると思ってなかったからちょっと驚いた。
 私はきょろきょろしてその人を探す。けど、見つからなかった。
 あれ?
 と思って首を傾げると、また声が聞こえた。

「こっちだよこっち」

 聞こえた方に目をやるが、やはりそこには人はいなかった。しかし、ちょっと視線を下にずらすと、あるモノを発見した。
 それは目を疑うモノだった。どう表現していいものか迷うが、思い付いたままを言葉にすると…


 オッサンが生えていた

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