《MUMEI》

 そのまんまやがな。

「君は?」

「…美星茜(mihoshi akane)よ」

「美星茜ちゃんかぁ、綺麗な名前だねぇ」

「蹴っ飛ばしていい?」

 身体の3分の2くらいが埋まってるから、うまいこと顔が蹴りやすい位置にある。全力で蹴っ飛ばしたらスカッとすると思うんだけどな。

「あっはっはっ、それはちょっと勘弁」

 オッサンは微塵も怯むことなく、相変わらずへらへらと笑っている。
 私はまた嘆息して、次の言葉を待った。

「オジサンはね、ここに生えているんだよ」

「はぁ?」

 オッサンはわけの分からないことを言った。
 おちょくっているのか。まぁ確かに第一印象はオッサンが生えているように見えたけど。

「帰っていい?」

 アホらしくなってきたので、ため息混じりにそう聞く。

「嘘だと思うかい?」

「嘘としか思えない」

「だったら確かめてみるといいよ」

「はい?」

 オッサンは両手を広げて見せた。まるで、さぁおいでと言わんばかりに。
 オッサンのこの自信はどこから湧いてくるのだ。

「オジサンはここに根付いているからね、そう簡単には抜けやしないよ」

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