《MUMEI》
もう一人の・・・
『任務終了!』


そんな言葉が再び過ぎる。




髪を整え、私は言った。


「さぁ、貴方からの慈悲が冷めぬうちに、これをお持ちくだされ」


ふろしきを差し出すと男は言った。


「慈悲のないことを言うな。 また来る」

立ち去る背中。


見送ると、感傷の間もなく部屋を片しに、使用人なのか? 
愛らしい幼子が綺麗に整頓し出て行く。



私・・・あの人を愛していたの?


(馬鹿を言え。 あんなものに心奪われるか?
ただの客じゃ。 時々、一夜の恋を買いに来るだけの。
理想とは程遠いわ!)


会話の女性の声が頭の中で響いてきた。


「だって、子供って・・・。  
そうよ!あの人の言っていたことは本当なの?  
子供を堕ろしたって?」


私はこの奇妙な設定に気を止めることなく、ごく自然に言葉を
返していた。


(ふん、、誰の子とも分からぬ子など産めるか!
”私の子”などど・・・ のぼせ上がりおって。
そんなだから二流・三流止まりなのじゃ。 
まぁ、貧乏人からここまで上りつめた努力は認めるがな)


「・・・・あなた何様?(汗)  性格悪いわよ、、。
堕ろしたんだ・・・ せっかく授かった赤ちゃんを・・・」


(私は遊女じゃ。  そんなこと、初めてではない。  
珍しくもなかろう?  じゃが今回は気付くのに遅れて
私としたことが大分苦しんでのう。
あのまま死ぬかと思う程苦しんだ。
別にそれでも良かったのじゃが・・・)


「完全に同情できないわ!
あなたには一切共感できないけど、とりあえず、さっきの人
本気であなた・・・というか私?を想っているわよ。  
なのにさっき対応は何? 思わせ振りにも程があるわ」


(本気? ふふ・・・  美香子は男を知らぬな)


「あの・・・・・。  
私、本当にあなたのこと嫌いだわ。 
どうやって、私の中に?  早く出てってよ! 
気安く私の名前を呼ばないで。 あなた何なの?」



★39章に続く★

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