《MUMEI》

「…千秋は素直でいいね。」



赤高ベンチ。


千秋を送り出したクロが呟く。



「僕の言葉を素直に受け取ってくれるから乗せやすいよ。」



「え〜?
でもあたしも普通にいい話だなって感動しちゃいましたよ。」



「は?…何が?」



「あの野球選手の話に決まってるだろ。」



近くでクロの話を聞いていた佑香と安本が口を開く。



「あぁ。」



「何て選手なんだ?」



「え?」



「その…ヒットを打った選手っていうのは。」



「え…あ〜、さ…さぁ?」



「…さぁって?」



「知りません。あれ嘘なんで。」



「「えぇッ!!??」」



「ウチ父さん忙しいからあんま遊び連れてってもらったこととかないし…」



「さ…最低だよこの人…」



「なはは!!ま、い〜じゃん!!」



(ダメだこいつ…)



(な…何の話してんだ?)



ベンチでは1人、


訳のわからない表情の久保がいた。

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