《MUMEI》

コート。



(そうだ…まずは認めよう。)



「…」



ヒュッ…



ボールは榊から左45へ。



(こいつがどんなおっかない奴かどうかは置いておいて、


単純に凄いシュートと突破力を持った選手であることに疑いようはない。


まず、そこを認める。)



キュキュッ…!!



仕掛ける左45。


しかし、


間は抜かせず。



(じゃあ、どうやったら勝てんのか…?


いや…違うな…


そうじゃない。)



「…おい。」



「?」



集中する千秋に、


榊が話し掛ける。



「お前…何で俺に付いてんだ?」



「え…?」



「そりゃ好き好きだろ〜けどよ?


止めれない以上、


俺に付いてるメリットがね〜だろ。」



「…」



(そうだ…どうやったら勝てるかじゃあない。)



「何考えてんだお前らのコーチ。アホか?」



(どんな形だろうとも絶対に俺が勝つって意志が大事なんだ…)



「さ…」



「あ?」



「お前…さ、」



「?」



「後半…コートに立てると思うなよ?」



「はぁ?」



「俺が…俺がお前を…」



「…何だ?」



(うぉぉぉこぇぇぇッ…!!)



「おおおお俺がッ!!


おおおお前をッ!!


コートからお…追い出してやるって言ってんだッ!!」



「…へぇ。」



これは千秋が生涯で初めて、



「俺にそんな口叩く奴がいるとは思わなかった。」



自分から売った喧嘩だった。



「おもしれぇ…やってみろ。」

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