《MUMEI》

ヒュッ…!!



赤高ディフェンスの中を固める5人が機能し、


秀皇の正面突破を阻む。


これは先までの展開と同様。


問題はこの先。


秀皇の6人目のフィールダーを抑えることができるかどうかだ。


要するに問題は、



(来るぞ…落ち着けッ!!)



千秋が榊を抑えられるかどうかだ。



「…勝負だ。」



榊にパスが回る。


自分で考えているよりもずっと早く、


千秋は落ち着きを取り戻す。


というよりも、



キュッ…!!



(ん…!!)



キュッ…!!



スイッチが入っていたという表現の方が近い。


右足を軽く動かした榊に反応する千秋。


ビビって反応せざるを得ない状況の先ほどとは違い、


自分の意志と判断で、


確実に榊のコースを塞ぐ。



ダム…キュッ!!



ワンドリブルから仕掛ける榊。


簡単に諦めるほど穏やかな相手ではなかった。


しかし、



キュッ!!



千秋が塞ぐコースは適切であった。



(反応はいい…が、)



榊は足を止めず、


強引に千秋を抜きにかかる。



(この体格差は努力じゃどうしようもなんね〜んだよ。)















………………………………



     そう
  それでいいんだ。




………………………………








榊のミスは、



(来るなら来いよ…!!)



千秋の『挑発』に乗ってしまったこと。



(ひ…引かねぇのか…!?)



その土俵で勝負した時、



ドンッ…!!



これほどまでに分の悪い相手がいたことを、



「ピーッ!!」



榊は知らなかった。

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