《MUMEI》

部屋が開かない。オートロックだから東屋達出掛けてるのか?インターホンに出ないし。

仕方ないから先に乙矢と七生の部屋に行くか。


「乙矢居る?」
薄い敷布団の上で俯せ寝で七生が呟いているのが見えた。うーわ気まずっ!


「電話壊れててフロント行った。高遠が留守にしてて東屋が扉の立て付け悪い洗面所に一人で閉じ込められてるから助け呼びに行かなきゃいけなくて。」

俺が少し離れていた間に東屋が面白いことに!

「じゃあ俺、校長からのバス片道分の賃金渡しにきただけだから」
互いに目を合わせないようにしている。
逃げよう。無理だ、この空気堪えられない。



「俺のことちゃんと見ろ!」
七生が俺の手を掴む。


痛い、どこが痛いかはっきりしないけど痛い。






電気が消えた。



後々に判明したのだがこの古い宿は強い電力に対応出来ないため、階ごとにグループ分けして、ある限界を突破すると一斉にそのグループのブレーカーが落ちる仕組みだった。

普段はこんなに客が入らないからこれでいいのだそうだ。

たまたま遠征で学生で満員になり急に消費電力が上がったのが停電の原因らしい。一応注意はしていたのに自己中心的な若者達はお構いなしなのである。嘆かわしい。

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