《MUMEI》
ロッカーの中
ロッカーは意外と簡単に破壊することができた。
派手な音をたてて、扉が床に落ちる。
 ユウゴは金づちを置いて、その中を覗き込んだ。
「何がある?」
後ろからユキナが聞く。
「なんか、書類みたいな」
「書類?」
「ああ」
頷きながら、ユウゴはその紙の束を取り出した。
そして、パラパラとめくってみる。

ほとんどは地図だ。
そして、意味不明な数字だらけの紙が何枚かある。
最後の一枚には、手書きの文章が書かれていた。

「これ、由井の字だ」
「ほんと?なにが書いてある?」
「……非常事の行動、だな」
「……つまり、これは誰かに何かがあったときのための?」
「ああ、非常用ロッカーってことか。この地図のチェックしてあるとこが非難場所なんだろ」
「ふーん。行ってみる?」
「……いや。あの女がいるかもしれないし」
「ああ、そっか」
ユキナが頷く。
「問題はこのわけわかんねえ数字だな」
ユウゴは数枚の紙を抜き出し、ヒラヒラと振ってみせた。
「何か、仲間だけで通じる暗号とか?」
「ああ、そうかも」
 二人はしばらくその数字の列を眺めながら、沈黙した。

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