《MUMEI》

「進路希望提出してねー奴は今日中に出せよー!」


担任の半どなり声でHRが終わった。


「二木はK大だろ〜?もう提出したんか?」

「ああ、昨日出した」

「はーあ、俺どうしようかな〜」


春とつるまなくなってからは、コイツ、多田といることが多くなった。


「天澤と一緒なんだろ?話しとかんくていいのか?」
「…」


そう。春と一緒に受けようと行っていたK大。
たまたま一緒だったことに「一緒だな」って笑い合った。
「一緒に頑張ろうな」って、励まし合った。


「別に、変えてないだろうし」

「わっかんねーぞ〜?一応確認しといたほうがいいんじゃないか〜?」


実は春に告白されたことを、多田にだけは話していた。

多田には、男の恋人がいるから…。

多田の恋人が、俺の幼なじみで、2人のことはそいつから聞いていた。

本気で好きだと言ったから、何も言わなかったし、軽蔑なんかしなかった。

多田も話してみたらすげーいい奴で、あいつが好きになるのもなんとなくなら…と思った。

だから、そういうのに詳しい多田に相談した。


「お前、今のままでいいのか?」

「何が?」

「天澤のこと、避けたままで」

「…」

「あいつ、めっちゃ辛そうだぞ」

「…」

「まあ、動揺するのも無理ないけどな。」

「もういいって。おら、帰るぞ」


ちら、と春を見ると
まだ席に座って、進路の紙を見ていた。

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