《MUMEI》

「ンっ…ン、ちょ、ちょっとまっ…」


家に連れて帰られて、入るなりなだれ込み。


てか!
キス、キスしてる!
俺、二木とキスしてるよ!!


「っ…ぷはっ」


息を整える。
目の前の人は、息一つ乱しちゃいない。


「はあー……
に、二木、あの、さ」


「…」


「なんで、ここに、いるの…?」


キスしたあと聞く台詞じゃないよなと思いつつ尋ねる。


「…会いに来た」


真剣な顔で答える二木。
ああ、やっぱり、かっこいいな…


って!そうじゃなくて!


「どうして、ここがわかったの?」


誰にも言わずに引っ越した。あ、担任にだけは仕方なく言ったけど、でもすっげー口止めしたはずなのに…

「山セン脅して吐かした」

「おどっ…!って…」


あの山センを脅すって、一体何をしたんだろう…。


「つーか、聞きたいこと山ほどあんだけど」


「…」


今度は俺が無言になる。


「何で何も言わなかった」

「…」


「親父さんが死んだことも、K大受けないことも、引っ越すことも」


「…」


「答えろよ!!!」


ビクッ


怖い。
相当怒ってる。


だけど、それはこっちも同じ。


「…言えるかよ」


「あ?」


「電話しても出てくれない、メールも無視、学校で話しかけても避ける、そんなん、いつ言えってんだよ…っ…」


泣いてしまった
涙が勝手に出てきたんだ


あの頃を 思い出してしまったから。


辛かった
拒絶されて、本当に辛かった
寂しかった
死にたかった
いなくなりたかった
姿を 見たくなかった



ポロポロ涙が零れる


「なん、で…ゥッ…なんできたんだよー…ヒック…ゥゥー…」


ガキみたいに、泣いてしまった

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