《MUMEI》

ああ、やっぱり
こんなに傷ついてたんだ


静かに泣き出した、二年ぶりに見るおまえ。


背、伸びてないな。
髪は伸びてるけど。

泣いたところなんか、見たことないぞ

この二年、おまえはどんなふうに過ごしてたんだ?

俺のことなんか、忘れて、楽しくしてるんだろうと思ってた

恋人なんかもできて、笑って、過ごしてるんだと思ってた




けど 違った


さっき バスから降りて、横におまえを見つけたとき、本当に驚いた


全然、楽しそうじゃなかった
笑ってなんかいなかった
すごく 淋しそうだった



おまえを
そんなふうにしたのは、





「春」


「…っ…」


「顔上げろ」


「……」


「頼む、顔見せてくれ」


「……っ……」

ゆっくり 顔を上げる春



数秒春の目を見つめて、ゆっくり、春の額に自分の額を近づける

重なりあった瞬間、実感した



「会いたかった」



声に出すのがやっとだった

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