《MUMEI》
無理な笑み
「それじゃあ飲み物持って来るね」

今宵が立ち上がると、紘、秋葉、歩雪が声をかけた。

「え〜!?いいよっ今宵ちゃん!!」

「そうよ。あたし達が急に押しかけたんだし」

「気にしないでいいよ。こー」

「ん。大丈夫だよ!!ちょっと待っててね!!」

今宵は3人に微笑んで見せると、階段を下りていった。

今宵の後姿を目で追うと、紘が呟く。

「・・・・・・今宵ちゃん、無理してんな」

歩雪は紘の言葉を聞いて、俯いた。

こー、目が赤かった。

昨日からずっと泣いてたのに、オレらが気にしないように笑ってるんだ。

バレバレなのにね。

だからこそ辛くなる。

オレが原因なのは間違いないんだから。

紘が歩雪と秋葉の方を向いて言った。

「歩雪、秋葉ちゃん。思ってることちゃんと言えよ?」

「・・・・・・分かってるわよ」

秋葉が小さく呟く。

オレもちゃんと言わなきゃ。

でも。

こんなことしようと思えたのは、琴吹のおかげだ。

琴吹がああ言ってくれなかったら、そのままだと思う。

歩雪は秋葉に笑いかけている紘を見て、今宵の家に来る前のことを思い出した。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫