《MUMEI》

「自惚れるな!
俺は決勝に気を取られてただけ!
朗読する文章は暗記出来てるくらい完璧なんだからな!」
七生が脇腹を擽ってくる。


「……やめっ

本当に、暗記したのかよっ……!」
七生が擽るのを止めた。



「聞かせて下さいだろ?」
ちっ、ムキになったら勢いで朗読してくれると思ったのに甘かったか。




「……聞かせて下さい」




「よし、まずは離れて」
手で俺を払いのけようとする七生にしがみついた。


「いいから!このまま引っ付いてた方が聞こえるんだよ!


七生の声よく聞かせて?」
やっぱり、俺この声が好きなんだ……。
普段だったら絶対にこいつに何か頼もうなんて思わない。





瞼を閉じて朗読する七生の声に聴き入った。

スゲー……気持ちいい、映像フィルムが鮮明に浮かび上がってくる。

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