《MUMEI》
水道水
ゴクッ‥ゴクッ‥ゴクッ…


「うめぇっ!!」

隣にいたウッチーと声を合わせながら叫ぶ。

たかが水道水。


されど水道水。
休憩時間に飲むと、こんなに美味いものなのかと思い知らされる。



暑さでほてった顔を冷まそうと、俺が顔を洗っていた時だ。


「森長ちゃん、可愛くね?」


水道水で生き返ったウッチーが俺にそう言ってきた。


う〜ん‥
同意求められてもなぁ…


「誰、それ?」


人の名前覚えるのが苦手な俺は、皆目検討もつかない。


「は?知らねぇの!?」

「言ってるだろ。」


マジかよって顔で俺を見るウッチー。



ごめんよ。
俺、物覚え悪ぃんだわ。



「ほら、あの子だよ!」

ウッチーは顔を輝かせながら、俺の肩を荒々しく叩いて、一人の生徒を指差した。



マジで…?




ウッチーの指差した生徒はバスケ部のマネージャー。


厚化粧お化けの一人だった。






ウッチー…。
お前、趣味悪いぜ‥?





って事は心の奥に閉まって

「ほら、行くぞ!」


感想も同意もしないまま、休暇終了のブザーがけたたましくなるコートへ戻っていく。




どこからか心地の良い音楽が、春風に乗って俺の耳に届いた。

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