《MUMEI》
壊された檻
.


あぁ、そうか‥
私、気絶してたんだ…


加奈子は気怠い体をゆっくり起こして



そして……




絶句した。




檻が…目茶苦茶…。



壊されたのだ。
そこにあったであろう檻の真ん中に立っているモノに。

両手足に生えた鋭い爪。
口元からは二つの長い牙が見えている。

大きな黒い翼がバサバサと、窓のない部屋に風を作り起こす。


筋肉の異常発達のせいで、本来の細胞が破裂してしまったのか、体中酷く流血している。



以前の姿形を残すことは許されなかった肉体は、一歩、一歩と有馬達に近いていく。



足元に転がっていた唯一の大切な物を踏み潰して…




「ヒッ…!く、来るな…来るなぁ!」



自ら創り上げたモノに怯えを成して腰を抜かす有馬を嘲る様に、ソレはけたたましく吠える、と同時に翼を広げ天井ギリギリまで舞い上がった。


「うわぁ!」
「きゃあ!」

かなりの送風で、加奈子や、他の三人も後ろに倒れ込み、尻餅を着いてしまった。



怖い…


コレが有馬の創り出した悪魔なの?



怖い…


コレが



コレがリョウなの?





怖いよ



でも………




「この…っ化け物がぁ!」

その一言が引き金となる様に、ソレは有馬達目掛けて急降下し始めた。




リョウ……


「止めてぇ!!」


加奈子は叫びながら有馬達の前に立ち塞がった。

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