《MUMEI》

「ピッ!!」



榊に千秋を抜く術はなかった。


榊はようやくそれに気付き、


そして悟る。



(そうか…そうだな…)



自分の実力がどれ程の物かということ。



(勝ち方に拘ってる場合じゃねぇ…)



自分の現在地がどこなのかということに。



「1本取るぞッ!!」



「おぅッ!!!!!」



キュッ…



「…」



すぐさま榊にマークに付く千秋。



「…」



「…?」



千秋は感じた。



ゾクッ…



これまでとは違う榊の雰囲気を。



(何か仕掛けて来るな…)



自然と姿勢が低くなる千秋。


ディフェンスの基本が体に身についている証拠だ。



(抜くことが勝ちじゃねぇ…)



対する榊の頭に、



(とにかく…)



既に千秋の姿はない。



(点を取ればいい。)



榊が導きだした答えは、



ダッ…!!



(来たッ!!)



長距離砲。



ロングシュートだ。



「くッ…!!」



千秋がマークするも、


さすがにボールをもらうだけなら榊にも可能だ。



キュキュッ…!!



スピードは緩めず、


そのままシュートへ。



(ロングかッ…!!)



ようやく千秋も榊の狙いに気付く。


が、


既に榊はシュートモーション。


ここからでは千秋に榊を止める術はない。















バシッ…!!















千秋に…は。

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