《MUMEI》

「…っし!!」



榊渾身のロングシュートは村木の手により止められる。



「ゴーだッ!!」



走り出す両サイド。


当然、



ダッ…!!!!



(させね〜しッ!!)



秀皇両サイドはそれを追う。



「…」



(位置が悪い…)



ボールを拾う村木。


速攻に走る両サイドの位置を確認するも、


パスが出せる状況ではなかった。



(そんなもんか…)



「…ふぅ。」



ため息をつく村木。



ヒュッ…



ボールは椎名へ。



チラッ…



時計を確認する椎名。



26分47秒。



(そう余裕があるわけでもないな…)



この場面、


少ない時間の中で得点を取ることができる速攻が理想的な点の取り方であったが、


秀皇はそれを阻止する。


逆に言えば、


今ここで速攻を入れられてしまうと秀皇の逆転はかなり厳しい状況。


前半終盤にて連取こそ許してしまった秀皇だったが、


ここを凌げば後半に望みを繋げることができる。


それほどまでに追い詰められた秀皇の選手たちは、


ようやく取り戻す。



    『危機感』




何が起こるかわからない試合の中で、


決して失ってはいけない重要な感情を。

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