《MUMEI》

「もーすぐできるからね。ご飯ついどいて」

「飯たいてねぇぞ」

「朝炊いといたからダイジョブ」

言われたとおりもう半年くらい使ってなかった炊飯器をあける、たちのぼる甘い匂い。うわ、ちょっと泣きそうだ俺。
温かいご飯を茶碗についで、机の上も片付ける。ちらばったレポート用紙と文献をどけて、煙草はまとめてゴミ箱に。

「はーいできましたよー」

鮮やかな色のエビチリは大皿に盛られてやってきた。卵と春雨のスープまでついている。かなり、嬉しい。

「いただきまぁす」

久々に料理のまえで手をあわせた。小さくなったエビを頬張る、ピリリ、豆板醤とにんにくが舌を刺激する。

「旨いな」

「でしょー!わぁ、あつくんに誉められると嬉しい」

「旨いよ、マジで」

「んふふー。いっぱい食べてね」

言われなくても食うよ。
たとえまずくてもお前の作ったもんは何でも食える気がする。

久々に温かいご飯を食った3日目。腹の底にたまる温かいものは、ご飯だけでなかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫