《MUMEI》
地上へ
「……それで、気はすんだ?」
しばらくして、ユキナがポツリと言った。
「え?」
「これ、見たかったんでしょ?」
「ああ、まあな」
ユウゴは頷きながらも、なんともいえない微妙な表情を作った。
「……なんとなく、予想とは違ったけど、まあ、すっきりした」
「それは、よかったね」
「ああ」
ユウゴはもう一度、数字を上から下まで眺める。
「ねえ、そんなに眺めても謎は解決しないって」
「……だな。しょうがない。あとで考えるか」
ユウゴは紙の束を、この数日で穴が開きそうなほどボロボロになった鞄に収めた。
「……やっぱり、考えるんだ」
「なんだよ?」
呆れたようなユキナの視線を感じ、ユウゴは睨み返した。
「別に。ほら、さっさと行こう。また、あのコネ男が戻ってくるかも」
「……そうだな」
ユキナを睨みながら、ユウゴは頷いた。
「じゃあ、とりあえず上に出るか。たしかに、ここはやばそうだ。……いろいろと」

 ユウゴは天井を見上げた。
つられてユキナも上を見上げる。
ひび割れた天井が今にも落ちてきそうだ。
「行こう」
ユウゴの声に、ユキナは頷いた。


 二人が広場に戻った時、線路の方からカツンと音が聞こえてきた。
「まさか、あいつらが?」
囁くような小声でユキナが呟く。
ユウゴは黙ったまま、腰を落とすと、そっと改札の方へ近づいて行った。

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