《MUMEI》 観客席からここまでの試合の一部始終を見ていた猪狩。 彼の心境は複雑だった。 一年前、 彼のハンド人生の黒歴史を作る引金となったチームを今、 彼自身が潰しかけたチームの選手たちが追い詰めているのだから。 (何だよクソ…) そして… 途方もない大きさの後悔の念が彼の胸を突き刺す。 それを正面から受け止めるには、 まだ彼は幼すぎた。 ……………………………… ……………………………… ザワザワザワザワ… 「やるな〜あいつら。」 ザワザワザワザワ… 同じく観客席。 赤高応援陣と同様に盛り上がるヤマトたち。 ザワザワザワザワ… 「千秋が機能すりゃこんなもんだろ。」 ザワザワザワザワ… 「まだ勝ち確じゃないにしろ前半は上出来だな。」 ザワザワザワザワ… 「ま…マジで決勝行けちゃうんじゃない!?」 ザワザワザワザワ… 「絶対行けますよ!!」 ザワザワザワザワ… 「勝負の世界に絶対はね〜よ。」 ザワザワザワザワ… 「またすぐそうやってヤマトくんは水差すようなこと言う…」 ザワザワザワザワ… 「緊張感を失ったらダメなんだよ。 特にあいつら(赤高)みたいに経験のないぺーぺー共は。」 ザワザワザワザワ… 「俺もそーもう(そう思う)。」 ザワザワザワザワ… 「うぅ゙…」 ザワザワザワザワ… 「むしろこのハーフタイムが厳しいのはこっちだからな。 いかに緊張感を保てるかがポイント。 負けてる秀皇は嫌でも緊張感を持てるけど、 こっちにしちゃ出来すぎもいいとこだからな。 こんな状況下で緊張感を保つのは中々に厳しい。」 ザワザワザワザワ… 「まぁ…それが人間の心理ですよね…」 ザワザワザワザワ… 「理紗ちゃんも乗せられてるし…」 ザワザワザワザワ… 「乗せられてるっていうか俺たちの方が正」 「もうわかったッ!!」 ザワザワザワザワ… (逆ギレかよ…) ザワザワザワザワ… 「コラッ!!油断すんなよお前らッ!!」 ザワザワザワザワ… 「いや…何もそこまで言わなくても…」 ザワザワザワザワ… 前へ |次へ |
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