《MUMEI》

上野攻略の説明後、


ディフェンスに関しての細かい指示と、


セットプレーの説明をし、


後半の立ち回りについての話を終えた。



「以上。質問は?」



選手たちは顔を見合せた後返事をする。



「…ないす。」



「よし。」



時計を確認するクロ。



「んじゃ時間もないようだし最後。」



「?」



「日高。」



「え…あ…はい?」



「お前はちょっと気ぃ緩みすぎ。」



「え…」



予期せぬ言葉に驚く日高。



「セットに関してあんな指示は出してないし、


ディフェンスもマークマンから目離れんの早い。


裏かかれたらどうすんの?


そこまでちゃんと考えてる?」



「…」



考えてる。


と、


反論の言葉はすぐに頭に浮かぶが、


口でそう言ったところで状況が悪化するだけであろうことを察した。



「気抜いたらやられる。


後から失敗を悔やむこと何て言うか知ってる?


後悔って言うんだよ。


少なくともそれをしたくないからこれまで頑張ってたんじゃないの?」



「…」



「少し考えて後半に臨みな。


走り負けることをしょうがないなんて思うなよ。


お前がもっと走れることくらいわかってっからな。」



「…うっす。」



クロは、


ミーティングの最後に緊張感を与えた。


それは決して良い意味での緊張感とは呼べる物ではなかったが、


この試合を勝つ為に、


乗り越えなければならない最低限のラインに位置する最大級の壁だった。

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