《MUMEI》
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「ゔ」


ゴツッ!











鈍い音だった





「「「!!」」」


クッキーを囓っていた一人が、机に頭を落とした音である




反射的に他の三人は立ち上がって、中年の男を警戒した眼で睨む


「…毒か!」






男は肩を竦めたきりだった
































と、



「ゲホッ」

机に頭をついたままの一人が、咳をした。




すると机に垂れる髪の間から、何かが舞いあがる。






ヒラヒラと、耀めきながら優雅に舞う



「…蝶?」

三人の瞳は今現れた、



白銀に輝く蝶を追う


「綺麗だ…」








「来たか…早かったな」

中年の男は苦い表情で呟く。


「そう、綺麗だ。しかし…」


男は組んでいた腕をほどき、今にも窓から飛び出さんとする蝶に手のひらを向けた。





と、蝶に炎が…






いや…まるで蝶自体から炎が出た様に、その白銀は灰になった





男はそっと腕を下ろすと

「…綺麗なもの、光り輝くものが正義とは限らない」











机に伏していた一人が事態が飲み込めないまま、頭を上げる







「…闇が悪とも、限らない」



何処からか取り出したタバコを咥え、

指先に灯した火を近付けた。




「…なんだ、お前ら。口開きっ放しだぞ」



男は笑った(幾分か若く見えた)








しかし、男のその笑顔は





当惑したように歪められていた

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