《MUMEI》

「おはーす……」
次々挨拶を交わす。
乙矢は低血圧でさっきからずっと無言だ。首が下を向いている。
廊下を出るとその辺の壁にぶつかりに行こうとするのが面白い。
乙矢を正しい道へ誘導したり七生の支度(中々起きないのでいつも時間ギリギリまで眠る)を待ったりして、なんとか男子全員揃った。


「木下、こんな介護よくやるよな……尊敬するよ」
東屋が俺を横目に言う。
……成る程、介護ね……言われてみれば。
朝食は学校団体で申し込んだため、顧問と先輩女子とロビーで合流してから食堂に行く。






「内館くん右目少し腫れてるけどどうしたの?」
先輩の一人が聞いてきた。

「寝ぼけてて、ぶつけたんです。」
七生が嘘をついた。

笑いを堪えるのが辛い……

本当は寝ぼけていた乙矢がぐっすり眠っている七生を蹴っ飛ばしたのだ。

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