《MUMEI》
公園
「歩雪。ちょっと外出れるか?」

歩雪の携帯に紘から電話が入ったのは、今日の昼頃であった。

「いいけど。どこに」

「お前の家の近くの公園。秋葉ちゃんもいるから」

「秋葉も?どうして」

「じゃあ待ってるから」

歩雪が紘を呼びかけようとする前に電話が切れた。

なんだろ、琴吹。

秋葉もいるなんて・・・・・・。

「行ってくるか」

歩雪は上に羽織ると、家を出た。

こー、大丈夫かな。

隣にある今宵の家を見上げると、公園へ向かった。





「何なの、急に」

歩雪は公園に入り、紘と秋葉に声をかけた。

歩雪に気づいた紘は手招きをする。

「悪かったな。急に」

「いいけど。何で秋葉もいるの」

歩雪は駆け寄りながら、紘の隣にいる秋葉に尋ねた。

「あたしも分かんないわよ。コトに呼び出されたの」

「何を言う為にオレらを呼び出したの?琴吹」

なんとなく分かってるけど。

秋葉の答えを聞いて、歩雪は紘に尋ねた。

琴吹の様子もいつもと違って真面目だし。

昨日のことだよな。

歩雪と秋葉が紘を見つめると、紘は口を開いた。

「昨日、今宵ちゃん泣いて帰った」

「何で!?あたし達といる時は笑ってたじゃない!!」

秋葉が勢いよく紘に尋ねる。

「オレらに気を使わせない為だろ!?・・・・・・だから帰り道あんなに堪えてたもんを吐き出したんだよ」

「そんな・・・・・・」

紘が俯くと、秋葉は溜息と一緒に呟いた。

何であの時、気づいてやらなかったんだろ・・・・・・。

人に泣いてるとこ見せるのがあんなに嫌いなこーが、琴吹の前で泣くなんて。

よっぽど我慢してオレらに気づかれないようにしてたんだ。

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