《MUMEI》

「あの…克哉さんのお友達なんですか…」
「んん?…あぁ」

トリスタンさんは僕の髪の毛で遊んでいたその手を後頭部に滑らせてくると、ゆっくりと頭を撫でてきた。

こういう人特有の指使いで撫でられると、何だかだんだん心地よくなってくる。

「ん…///」
「ねぇ…」
「…はい」

僕に優しそうな声で話しかけてくると、いきなりトリスタンさんは僕にその綺麗に整った顔を近づけてきた。

「うわっ///」
「んふふっ…私と克哉の関係が気になるでしょう」
「ぁ///」

その通りだった…。

僕の昔を克哉さんに打ち明けた事はあったけど、僕は克哉さんの過去を知らない、だから少しでも知りたかった。

どんな事があったとしても、僕は受け入れられる覚悟はある。

克哉さんもこんな僕の事を受け入れてくれたし…僕も何があっても驚かないつもりだった。


「昔、夫婦だったの〜♪」

一瞬、トリスタンさんが何を言っているのか理解できなかった。

「あの…夫婦…って…」

トリスタンさんはクスクス笑いながら、驚いている僕の顔を携帯で撮っていた。

「超〜ミニョンヌ///」
「あの…からかってるんですか…」

でも、やっぱりそうだったんだ…。

克哉さんはあんなに格好いいし、頭も良くて優しいし、とても格好いい人だから、元恋人がいっぱいいておかしくないもんなぁ…。

でも…克哉さん、自分は男ばかりが好きなワケじゃないとか言っておいて…。

「はぁ…」

別にいいけど…。

小さな嘘でも気になってしまう僕は、ここに来てから気持ちが小さくなってしまったのかな…。

「あいつの好きそうなタイプね、カワイイ♪」
「え…でもトリスタンさんは美人ですよ」
「そう、ありがと♪」

そんなやりとりをしているとトリスタンさんが僕にベタベタしてきて、くるみちゃんはそんな僕らの間に挟まれてムニムニになっていた。

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