《MUMEI》

「仲良いですね…」
「あぁ、友人だ」
「そう…なんですか」

何だかホッとした。

別に…杞憂だとは思うけど…とても綺麗な人だったから、克哉さんの側に綺麗な人が居るだけで不安になってしまう。

僕は男性としては日本ではまぁまぁくらいだったけど、こっちに来てからは比べものにならないくらいちんちくりんな方になってしまっていた。

女性と比べても…というか女性と比べるのもどうかと思うけど、こっちは女性も逞しくて気後れしてしまう。

それに僕は派手なブロンド美人でも無いただの日本人だから、何だか僕は見劣りしているような気がしていた。

でも、克哉さんが僕を選んでくれたんだから僕はちゃんとしていなければと思っている。

僕もいつか克哉さんに似合うような、あんな美人になれたらいいのにな…。


「あのねあきらしゃん、あのひとはねトリスたんなんだぉ」
「え、トリスさん?」
「Tristan…(トリスタン)」

いつの間にか克哉さんと話していたその美人が僕の側まで近づいてきていて、その綺麗な細い指で僕の首筋を撫でてきた。

「あきゃっ♪トリスたんだぁ〜♪」
「ひぃι」
「あなたの名前は、あきらって言うのよね」
「え、ぁ…はい///日本語…喋れるんですか?」
「う〜ん…若干ね、さくらに習った」

トリスタンさんの言った”さくら”というのは克哉さんのお母さんの事だ、直接会った事は無いけど、結構アクティブな人だと聞いていた。

いずれ会うんだろうけど…どんな人なんだろう…。


くるみちゃんからトリスタンと呼ばれたその人は、物腰が柔らかくて僕より背は少し高い方で、緩やかなパーマのかかったサラサラな栗毛は、より一層優しそうな雰囲気を醸し出していた。

「トリスたんはね、いっつもお家に遊びに来てくれるのぉ!」
「お遊びじゃないんだけどねぇ〜」

そんなトリスタンさんは僕の隣に座って僕の髪を撫でながらニコニコと笑っていた。

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