《MUMEI》 貴方の長い髪に貴方のその長い髪に、 口づけをさせて下さい。 この夜が明ける前に。 ただ一度、 唇を触れたいのです。 世界に終わりが来ても、 貴方は僕を選ばない。 ならば、僕は。 貴方の人生を横切っただけの、風でありたいから。 貴方のその長い髪に、 口づけをさせて下さい。 僕がただの風ならば。 貴方の髪に唇が触れても、 貴方は困らないはず。 貴方のその長い髪に、 口づけをさせて下さい。 今日の朝陽が射し込む前に。 ただ一度、 唇を触れたいのです。 この想いを言葉にしても、 貴方は僕に頷かない。 ならば、僕は。 貴方の往く道に佇んでいた、 風でありたいと願う。 貴方のその長い髪に、 口づけをさせて下さい。 僕がただの風ならば。 貴方の髪を、 微かに揺らしてみても、 貴方は困らないはず。 貴方のその長い髪に。 貴方のその長い髪に。 出来るなら十本の指を入れて、 欲望のままに唇を奪い、 欲望のままに舌を絡ませ、 欲望のままに汚したいのに。 貴方は遠く、 僕を見つめながら、 過ぎた時代を追いかける。 その時代に居たのが、 彼でなく僕であったなら、 決して貴方を、 独りになんて、 させなかったのに。 貴方のその長い髪に、 口づけをさせて下さい。 この夜が明ける前に。 ただ一度、 唇を触れたいのです。 世界に終わりが来ても、 貴方は僕を選ばない。 ならば、僕は。 貴方が追いかけるあの人の、 影になりたいから。 貴方のその長い髪に、 口づけをさせて下さい。 僕がただの影ならば。 貴方の髪に唇が触れても、貴方は困らないはず。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |