《MUMEI》
2 にわか雨
 「すごい雨……」
翌日、全ての授業をこなし放課後
友人と多目的ホールで談笑をしていた桜井が徐に外を見る
ソレまでの晴れとは打って変わって突然の大雨
「……傘、持ってないや」
言葉通り傘など持ち合わせておらず、どうしようかと悩んでいると
其処から見渡せる中庭、そこに立つ木の影に桜井はヒトの影を見た気がした
「……?」
何故かその人影が気に掛った桜井
友人との会話も程々に切り上げ、その人影を追う
「……歩?どしたの?」
突然に走り出した桜井へ
鞄の中に居たらしいハルが驚いたかの様に顔を出してくる
一体どうしたのか、、改めて問うてくるハルへ
「私にもわかんない!」
返答には余り相応しくないソレを返してやりながら
桜井は構内をひた走る
目的手である中庭へ到着したころには息がすっかり切れ
だが構う事もせず、桜井は辺りを見回し始めた
「風邪を、引いてしまいますよ」
暫くそうしていた桜井へ、
その頭上に徐に現れた傘の影
突然のそれアナタ、に、そちらを向いて直って見れば
追っていたその人物が、そこに立っていた
「……あなた、もしかして――」
何か、不思議な雰囲気を持つ相手へ
桜井が首を傾げながら、更に問うても様とした
次の瞬間
「あ〜。雨月(うづき)だ〜」
鞄の中で寝ていた筈のハルが顔を出してきた
やはり知った顔らしく
互いに顔を見合せながら、軽い挨拶をかわす
「ハル、お久しいですね」
「うん。久し振りだね〜」
「ちゃんと、こちらで生活出来てました?」
「出来てたよ〜。歩も一緒に居てくれてるし」
ね、と同意を求められ
桜井は咄嗟に言葉を失ってしまう
どう返していいのか解らず、口籠ってしまえば
僅かに笑う声が聞こえ、手を掬いあげられて
「驚かしてしまったようですね。私は雨月と申します。ハルと同じ天気を司る妖精です」
「あなたも?」
「はい。これから宜しくお願いしますね」
手の平へと唇が触れてきた
行き成りのソレに、桜井は顔中真っ赤
動揺に言葉にならない声が口を突いて出始めてしまった
「……あ、あの、私……!」
ハルとは余りに性格が違い過ぎ、その動揺は最高潮に
ソレを知ってか知らずか、雨月は更に笑みを浮かべて見せる
「お近づきに、少しだけ私にお付き合い戴けませんか?」
「え?」
「ハル、暫く(ひまわり)をお借りしますね」
「……雨月。何所、行くの?」
出掛けるというその旨に、ハルが小首をかしげて見せてやれば
雨月は小さなハルを手の平へと乗せてやり
「秘密です」
空いているもう一方の人差し指を唇へと宛がってやり
雨月はハルを降ろしてやると桜井の手を取っていた
「あ、あの、ちょっと……!?」
「雨の中の散歩というのも、中々に乙なものですよ」
だからお付き合い下さい、と片眼を閉じて向けられてしまえば
それ以上桜井に否を唱える事など出来なかった
「有難う御座います」
「それで?何所、行くの?」
「……そう、ですね」
借りると桜井を引っ張り出して置きながら目的地を決めていなかった様で
立ち止まり考え始めてしまう雨月へ
桜井は苦笑に肩を落とし、雨月の手を引いた
そして連れて行った其処は、近所の公園
色とりどり様々な花が一面に咲き乱れていた
「……これは綺麗ですね」
「でしょ?雨のお陰で花や葉の砂埃が落ちてすごくきれい」
「もう少し、近くで見てみましょうか」
「そだね」
そのままた近くまで寄って見れば
その可愛らしさに、自然と笑みがこぼれる
「かわいい」
「そうですね」
桜井の言葉に穏やかに返してくる雨月
微笑を浮かべて見せるその横顔を桜井はまじまじと眺めてみた
「どうか、しましたか?」
その視線に気づいたらしい雨月が照れたように笑み
桜井は漸く眼を逸らしてやる
「……雨、止まないね」
互いが互いに意識してしまい、目を合わせられずにいると
徐に桜井が問う事をしてきた
型を支えに傘を斜めに差しながら、雨空を眺め見る桜井だ
「……雨は、お嫌いですか?」
「え?」
桜井の横へと立ち位置をかえ、そして徐な問い掛け
桜井が雨月の方を見やってみれば
「行き成り、すいません。唯、何かを憂う様に空を見上げていた様なので」
「私、そんな風に見えてた?」
「はい」

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