《MUMEI》
解ける
「ごめんね〜!!遅くなって!!」

今宵が部屋に入りながら声をかけた。

そして、はい、と3人に林檎ジュースが入ったコップを渡すと、クッションに腰を下ろした。

「今宵ちゃんの部屋かわいーね!!ぴったしだよ♪」

「あははー。ありがと、琴吹くん・・・・・・」

今宵は気づかれないように小さく溜息をついた。

琴吹くんがいなきゃ、ホントに気まずかったなぁ。

ただでさえこんな重い空気なんだし。

この空気に絶えられなくなったように、秋葉が口を開いた。

「雪村。・・・・・・何で昨日あたしたち置いて帰っちゃったのよ」

「秋葉ちゃん?」

今宵は困惑したように聞き返す。

何でって。

秋葉ちゃん達うまくいったみたいだったから、あの場にいたくなくて・・・・・・。

俯く今宵を見て、歩雪が口を開いた。

「オレらは何にもなってないよ。こー」

「う、嘘!!だって2人は・・・・・・」

歩雪の言葉に、今宵は慌てたように顔を上げて声を荒げた。

名前、呼んでたよね・・・・・・?

「あれは違うわよ!!あたしが歩雪に頼んだの。フラれたんだから、友達になろうと思って!!」

「・・・・・・え?ホントなの、秋葉ちゃん!?」

フラれたって・・・・・・。

だってあんなに吹っ切れた顔してたのに。

「ホントよ!!あんたの勘違いなの!!」

「そう、なの・・・・・・?」

「そう。秋葉には悪いけど、断った」

「歩雪くん・・・・・・」

じゃあ、全部私の勘違いだったんだ・・・・・・。

今宵は俯いて小さく呟いた。

「ごめんね。私、気遣わしちゃったんだね。琴吹くんにも、いっぱい迷惑かけて・・・・・・」

「何言ってんだよ、今宵ちゃん!!昨日は何も見てないって言ったろ?」

「琴吹くん・・・・・・。ありがと」

ニカッと笑ってみせる紘に、今宵は安心したように顔を緩めた。

「ごめん、こー。いっぱい無理させて・・・・・・」

「目、赤いのは沢山泣いたから、でしょ?あたしのせい、ね」

歩雪と秋葉は、申し訳なさそうに今宵に声をかける。

「歩雪くん、秋葉ちゃん。ホントにごめんね。2人が悪いわけじゃないのに・・・・・・」

駄目だなぁ〜私。

こんなにみんなに迷惑かけて。

今、ちゃんと言った方がいいんだよね。

昨日も思ったけど、このままにはしておけない。

「こー。ちゃんと話して、琴吹達に聞いてもらったら?」

「歩雪くん。何で分かったの!?」

「何年一緒にいると思ってるの。このままだったら、いつまでも変わんないんじゃない?」

歩雪は今宵に優しく話しかける。

そうだよね。

今話さないといけないことだもんね。

「・・・・・・ちょっと、話聞いてくれる?」

今宵は緊張した面持ちで、口を開いた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫