《MUMEI》

シュートそのものに変化を付けるのは実に難しい。


長年の特訓により体に染み込んだ癖は中々消える物ではない。


シュートを打つ一瞬の時間に、


普段とは違うシュートを打とうという結論にたどり着くことは中々できない。


仮にその結論に達したとしても、


咄嗟に変化をつけたシュートは本来のシュートと比べ悲惨な物になるだろう。


だとしたら…


シュートそのものに変化をつけるのは得策とは言えない。


ここまでを全て理解した上で、


大地はパスという行動を取った。


それはつまり、


シュートの打ち手を変える。


という実に単純な答え。


だが、


効果は絶大。



バスッ!!



「っ…!!」



ここでのパスの利点はいくつかあり、


1つは思考の切り替えが挙げられる。


村木の思考を変え、


直後に別のシューターのクイックのシュート。


キーパーに時間は与えず、


考えのまとまらない内に勝負。


シュートそのものに変化はつけずとも、


作り出した環境次第でいくらでも緩急は付けられる。


そして最大の利点は、



(そう来たか…)



そういう選択肢もあるのだという印象を相手に与えることができる点。



後半1分53秒。11対8。

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