《MUMEI》

    観客席。



「あいつ…全然動き落ちてね〜な。」



「全く…本来のプレースタイルとは若干違う気もしますが動きそのものは高校ん時と変わんないすね。」



そこには観客に紛れたヤマトと翔太の姿があった。



「しかし何でまた海南に…」



「たぶんあいつだろ。」



「あいつ?」



「海南のキーパー。見覚えあんだろ。」



「あ…」



「水川恭介。
大学進学確実だと思ったけど、今試合に出てるってことは進学してね〜んだな。」



「…何か意図があるんでしょ〜か。」



「じゃなきゃ社会人でなんかやってね〜だろ。」



「ふむ…」



「ところでお前は?」



「え?」



「進学。」



「あぁ。しないすよ。」



「はぁぁあ?
大学界が泣いて悲しむぞ?」



「知らねっすよ。
俺進学できるほど頭良くないし。」



「進学っつ〜か卒業もやべ〜だろ。」



「ゔっ…」



「勉強出来なくてもお前なら普通にハンドで入れんだろ。」



「金もないすし。」



「特待は?」



「まぁぶっちゃけるとそういう類の話も来てるには来てますね。」



「んじゃい〜じゃん。」



「あのですね〜、特待で入ったとしても授業料以外にも金はかかるじゃないすか。


残念ながら俺にはその金すらないんす。


生活費を稼ぐのでいっぱいいっぱいになって部活なんかできる余裕なんてないですよ。」



「…お前は俺なんかよりずっと苦労してんな。」



「自分で選んだ道ですから。」



「…」

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