《MUMEI》
3
栞里は真顔で言った。
「夜月さん。水着取ったら明日から来ないよ」
「ダメだよ」
「ダメだよじゃなくて取らなければいいんですよう」栞里は赤い顔をしながら笑った。
「そっか」
栞里がサワーを飲みほすと、夜月は彼女の手を取った。
「ではお姫様、まいりましょうか」
「あ、指一本触れた。約束破ったね」
ふざける栞里に夜月の興奮はレッドゾーンだ。ボルテージが急上昇する。
栞里姫をプレイルームへ連れていくと、夜月は早速彼女をベッドにすわらせた。
「栞里さんは美しき姫で、オレは片思いの側近ね」
「何それ?」栞里は笑顔で聞いた。
「側近は身分の違いから叶わぬ恋なんだけど、栞里姫の水着姿を見て理性が飛んでねえ、姫を裏切っちゃうの」
「嘘…」栞里はおなかに手を当てた。「姫は何も知らずに信じきってベッドに寝るの?」
「そう」
栞里はハラハラドキドキが止まらない。夜月実の変態ワールドにすでに入っていたらアウトではないか。
「姫様。ではおやすみなさいませ」
「おやすみ」
栞里はベッドに仰向けになった。目を閉じる。怖過ぎる。夜月は栞里の両手を掴むと、バンザイさせて一気に手枷にはめた。
「え?」
目を開ける栞里。夜月は両足首を掴む。
「何をしてるの!」
夜月は栞里の両足も足枷ではめる。肩幅以上に広げたことがない上品な姫様の両足を、容赦なく大開脚にして縛るのがSの意地悪なところだ。
「やめて、ほどいて」
栞里は暴れた。夜月は栞里姫にアイマスクをする。栞里は真っ赤な顔で笑いながら言った。
「きゃあ、目隠しはやめて、怖い怖い怖い、目隠しは待って」
緊張感が凄過ぎて演技ができない栞里。しかし夜月は栞里の耳もとで悪魔の囁きだ。
「栞里。女の子が水着姿で手足縛られて無抵抗で、オレがもしも狼に豹変したらどうするつもりだ?」
全く様子も声も違う。でも栞里は演技だと信じた。
「待って、水着は絶対取らないで」
「もちろん取るよ」
夜月が水着の紐をほどく。
「待ってください、待ってください。水着取ったら明日から来ないよ」
「いいよ」
「え?」
「明日から来ないなら、今夜が最後の夜か」
この技は通じない。栞里は慌てふためいた。
「待ってください夜月さん、明日も来ますから、だから、水着は許して」
「全裸は恥ずかしい?」夜月が優しく聞く。
「恥ずかしいです。水着は取らないでください。お願いですから」
白い水着姿で身じろぎするセクシーな栞里。夜月はソフトタッチで無防備なおなかを触った。
「かわいい」
「あ、触らないで」
「そういう生意気な態度取ると、手は下に移動するよ」
「わかった、やめて」
捕まってしまったか。栞里は初めてのSMプレイに死ぬほど緊張していた。手足を拘束されたら逆らえない。
「夜月さん。信じてますからね」
「大丈夫。リラックスして」

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