《MUMEI》
本当の親友
「・・・・・・こんなことがあってから私は、深く人と付き合うのが怖くなったの。この日、歩雪くんは休んでたから知らなかったんだ。
でも様子が変だって心配してくれた歩雪くんにさえ、このこと話すのが怖かった」

今宵は小さくなって膝を抱えた。

「もう自分の心の奥のことは知られたくない、触れて欲しくないって思った。だから今はもうクラスの人達には愛想笑いばかりで、その分人の顔色を窺ってたの!!」

ここまで言うと今宵は、小さく震えながら強く強く膝を抱えた。

顔を埋めている腕には、細く雫が伝ってくる。

「・・・・・・オレが周りに気を遣いすぎてるって言った時、このこと思い出させちゃったんだよな。ごめんな、今宵ちゃん」

琴吹がそっと今宵の頭を撫でる。

分かってくれたのかな、私の話。

このことを聞いて態度が変わったりとかしないよね?

その時秋葉が今宵の体を大きく揺さぶった。

「バカ!!!あんた今まであたし達をそんな風に思ってきたの!?」

「秋葉ちゃ・・・・・・?」

今宵は埋めていた腕から顔を上げた。

「いつもいつも言いたいことは言わない、無理して笑う!!あたしが歩雪に告白するって言った時だって、今日もそうじゃない!!気になってるくせに無理して笑って、何も言わないで!!」

「秋葉ちゃん!!」

興奮したように捲くし立てる秋葉を紘が止める。

「だってそうでしょ!?あんただってそう思ってるくせに!!

言いたいことはハッキリ言えばいいじゃない!!何のためにあたし達が一緒にいると思ってんのよ!?」

乱れた息を落ち着かせる為に、秋葉は小さく息をついた。

「今宵ちゃん!!前にも言ったじゃん!!なんかあったら話聞かせてって!!」

な、と紘は笑みを浮かべる。

「秋葉ちゃん、琴吹くん・・・・・・」

「ここまで言っても信じられないの?あたし達のこと」

秋葉と紘は今宵を真剣な眼差しで見つめた。

今度こそ、信じてもいいの?

大丈夫、なんだよね?

今宵は今まで黙っていた歩雪の顔を見た。

歩雪は優しい笑みを浮かべて小さく頷く。

大丈夫、こいつらなら、と言う声が聞こえた気がした。

「・・・・・・今までごめんね。秋葉ちゃん、琴吹くん」

今宵は飛びっきりの笑顔を浮かべると、2人に向ける。

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