《MUMEI》
5
栞里は腰をくねらせる。水着姿でその仕草は危険だ。たまらなくセクシーに映るし、S心を刺激してしまう。
「かわいいな栞里。惚れそう。抱きたくなるね」
「ダメですよ絶対に」栞里は首を振った。「アイマスク外して」
「いいよ」
栞里の顔が見たいし、夜月はアイマスクを取った。
「栞里。さっきの姫様みたいにイメージプレイのときはさあ、女の子にアイマスクするんだ。目隠しされたほうが大胆になれるから」
「でも何も見えないと音だけで怖いよ」
親しげな栞里に、夜月は酔った。
「信頼している夜月さんでも怖いんだから、見知らぬ男に監禁される恐怖って、想像を絶するね」
栞里は笑顔で言ったが、夜月の顔が強張る。
「なぜ今そんな話を?」
「なぜって、ニュース見てないんですか。連続監禁事件。全部未遂に終わってますけど」
夜月は真顔で栞里を見つめた。
「あれは未遂じゃないよ。始めからレイプが目的じゃないと思う」
「夜月さんはそう思います?」
「それより今何でそんな話を?」
「だって、夜月さんはその道のプロだし」
夜月は栞里に顔を近づけた。
「オレが犯人だと疑ってるんだ?」
栞里は目を見開いて慌てた。
「何言ってるんですか、もう、びっくりしちゃいますねえ。怒りますよ、そういうこと言うと」
「疑ってるんだ?」
迫って来る。栞里は本気で焦った。
「夜月さん。疑ってたら手足縛らせると思います?」
「試したのか?」
夜月はソフトタッチで栞里のおなかを触る。
「ダメですよ、そんな怖い顔しちゃあ。心臓止まっちゃいますよ、あたし気弱いんだから」
しかし夜月は怖い顔で迫り、内股を触る。
「やめて」
「栞里。何か隠してるな。正直に言わないと拷問だぞ」
「拷問?」栞里は目を丸くした。
「何を企んでいる?」
「何も企んでなんかいません」
「とぼけるならくすぐりの刑だぞ」
「やめて」栞里は身じろぎする。
「じゃあ、言いな」
「夜月さんはあたしに隠してることはないの?」
夜月は一瞬焦った顔をした。
「隠してること?」
栞里は体を賭けて言った。
「夜月さんは、あの夜月実とは別人ですよね?」
水着で大の字の栞里が、緊張の面持ちで質問する。夜月は目を丸くして栞里を直視した。
「その質問を手足縛られたままするか!」夜月は震えていた。「もし同一人物だったらどうするんだ?」
栞里は甘い声で囁いた。
「もし同一人物だとしても、あなたはあたしに危害は加えないと思うから」
口を半開きにして栞里を凝視した夜月実は、声を震わせた。
「ダメだよ、女の子が体張っちゃあ」
栞里は大の字で無抵抗なのに堂々と落ち着いて、夜月を下から見つめていた。
「栞里」
夜月は彼女の手足をほどくと、強く抱きしめた。栞里はなすがままに抵抗せず、身を任せた。
「栞里。初めて本気で人を好きになったかもしれない」
「……」

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