《MUMEI》
澄んだ青空
翌日、タイキはなぜか高揚した気分で朝から公園へ向かっていた。
ミユウは口は悪いが、なぜか話していてもそこまで不快に思わない。
時々、ムカっとすることを言ったりもするが、いつの間にかそのことを忘れてしまうのだ。
そして何より、端末に詳しそうだ。
もしかすると、ハッキングの仕方も教えてもらえるかもしれない。
今、友人の間では、いかに端末をうまく扱えるかということを競うのが流行っている。
彼女のテクニックを教えてもらえれば、間違いなくタイキが一番だ。
タイキはにやけた顔をしたまま、公園についた。
しかし、いつものベンチに彼女はいない。
「なんだ、まだ来てないのか」
少しがっかりしながら、タイキはベンチに腰を下ろす。
朝の風は少し冷たい。
ぼんやりしながら空を眺めていると、「よう、タイキ」と声が聞こえてきた。
「何やってんだ?朝っぱらから、一人で」
そう言いながら近づいてくるのは、学校のクラスメイトだ。
タイキと一番仲がいい。
「なんだ、お前かよ」
「は?何、その態度。俺、傷つくわ〜」
大袈裟に胸を押さえながら、彼はドサっとタイキの隣に座った。
「いや、座んなよ」
「なんで?いいじゃん」
「よくない。人、待ってるから」
「人?……もしや、彼女?」
「……だったら?」
タイキは口の端を上げて笑ってみせた。
「うっそ!マジで?」
タイキは笑ったままだ。
「この裏切り者が!!」
「なんでだよ」
「よし。この俺がお前の彼女を評価してやる」
「しなくていい」
「いいや、する。で、何時に来るんだ?」
「さあ」
「さあって待ち合わせてるんじゃないのか?」
「別に」
「……ふざけてる?」
「わかった。彼女じゃない。待ち合わせもしてない。ただ、気が向いた時にここにいる」
「……なに、それ?」
「まあ、言ってみれば、友達でもないってことだ。ただの知り合い」
「……つまんねえ。つうか、俺に嘘つくな」
彼はそう言うと、よっこらせと立ち上がった。
「そんな来るか来ないかわかんない奴を待つほど俺は暇じゃないんでな」
「ああ、明日な」
「おう。じゃな」
彼は軽く手を振って去って行った。
タイキはその背を見送りながら、ため息をついた。
「本当に、今日来るのかな」
ぼんやり呟きながら、タイキは再び空を見上げた。
澄んだ青空に、雲が流れている。
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