《MUMEI》
風(2)
………………………………



「おざっす!!村木せんぱ」



ガバッ!!



「むがっ…」



ザワザワ…



朝。赤高中庭。


村木が後輩に挨拶をされている。


そんな光景に一部生徒がざわつき、


それを察した村木は千秋の口を塞ぎ校舎裏へと連れていく。



「む…村木のリンチだ…」



「かわいそうに…」



彼ほど誤解を受けやすい人間もそうそういるものではない。















………………………………



    校舎裏。



「何ですか一体ッ!?」



ポリポリ…



頭をかく村木。



「挨拶…しなくていいから。」



「え?」



「…それだけ。」



話は短く、簡潔であった。


校舎に戻ろうとする村木。


少し遅れて千秋がそれを追う。



「あ…」



何かに気付いた千秋が声をあげる。



(ん?)



振り返り千秋を見る村木。


そして千秋の視線の先を確認する。



「たはは。マジバカだな。」



「だからさ。ありえね〜よ。」



千秋の視線の先、
そこには裏門から自分たちの方へと向かって来る2人の生徒。



「ん?先客?」



ボソッ…
(村木じゃん。)



「いや、でももう帰るとこっぽいぞ。」



「ふ〜ん…」



2人の生徒とすれ違う村木。



ピクッ…



村木は立ち止まり、
2人の後ろ姿を確認する。



「…」



少し遅れる千秋に村木は尋ねる。



「…知ってる奴?」



「え…あぁ、知ってるっていうか前に関谷さんがハンド部に勧誘してた2人です。」



「…あいつらを?」



「え…はい。
結局入んなかったですけど。」



「…そうか。」

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