《MUMEI》
現れたのは
 ホームを見ようとしても、相変わらずの暗闇でよく見えない。
ユウゴは万が一を考え、銃を右手に構えた。

 後ろではユキナがホームから死角になる位置へと静かに移動している。
ユウゴもしゃがんで改札の陰に隠れながら、ホームに銃を向けた。

動く光はない。

しかし、微かに人の息遣いが聞こえる。

ユウゴはゴクリと唾を飲み込んだ。
気配は明らかに近づいて来る。
引き金にかけた指に力を入れる。

 コツと靴音がすぐ近くに聞こえた。
ユウゴはしゃがんだまま、「止まれ!」と怒鳴る。
その瞬間、キラリと光る物が見えた。
刃物のようだ。
「動くな。こっちには銃がある」
ユウゴはゆっくり立ち上がった。
向こうにいる人間は、息を飲み、動きを止めたようだ。

「兄ちゃん?」
暗闇の中から、聞き覚えのある声がした。
「……え?」
「僕だよ」
声の主はゆっくりと明かりの届く位置まで移動してきた。
「おまえ……」
 点滅する明かりが照らし出したのは、二日目に出会い、そして別れた少年、サトシだった。

「なんで、ここに?」
ユキナも安心したのか、近づいてきた。
「逃げてきたんだ」
そう言う彼の表情は、一日目に会った時とは比べものにならないほど暗い。

 大きな怪我はしていないようだが、服はひどく汚れている。
下水道で移動していたのだ、汚れて当然だろう。

それにしても……
「ねえ、他の子たちは?」
ユウゴと同じ疑問を持ったのだろう、ユキナが聞いた。
すると彼はひどく疲れた様子で頭を垂れた。

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