《MUMEI》

………………………………



沖が5分17秒という驚異的な自己紹介のタイムを叩きだしている中で、


2人が授業中に喧嘩をしていたことに気付く者はいなかった。


そして放課後。


人気のない校舎裏に、


日高と村木の姿があった。



………………………………



    校舎裏



「よく逃げなかったな。」



ポリポリ。



「…何で俺が逃げんだよ。」



頭をかきながらダルそうに答える村木。



ドサッ…



鞄を投げ捨てる日高。



「謝んなら今だぞ。」



「はぁ…」



ドサッ…



村木も鞄を置く。



(何で俺はこう敵を作りやすいかね…)



ダッ…!!



村木に向かって走る日高。



ヒュッ!!



す…



ヒュッ!!



す…



日高のパンチを軽く流す村木。



さ…



村木は半歩後ろに下がり、



ビュウッ!!



(うぉッ!!)



鋭い回し蹴りを放つ。



「っ…!!」



狙いは日高の顔面。


日高は交わすことも腕で守ることもできず、


反射的に取ることができた唯一の行動は、


目をつむる。


ただそれだけだった。



「っ…………?」



だが、


顔に衝撃はない。


ゆっくりと目を開ける日高。


村木の足は、


日高の顔面すれすれの位置で止まっていた。



すたっ…



足を下ろす村木。



「…満足?」



鞄を拾いながら尋ねる村木。



「な…何なんだよお前…」



日高の表情から読み取れたのは、


明らかな動揺。

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