《MUMEI》

「か…勘違いしてんじゃね〜よ!!」



ポリポリ。



頭をかく村木。



「何で俺がハンド部の部室見に行かなきゃなんね〜んだよッ!!」



こうしてまた日高は1つ嘘を重ねる。



「…別にい〜けど。」



「ぐっ…!!」



「あ……」



「?」



(いや…まぁいいか。)



「…」



スタスタ…



「いやちょっと待てッ!!」



「………え?」



俺のこと?


と言わんばかりの表情で振り返る村木。



「あってなんだよ!!あって!!」



「…あぁ。」



(聞きたいのか…めんどくさいな…)



「…ハンド部に入りたいのを否定はしね〜けど、」




(だから入りたくね〜って言ってんだろ…)



「とりあえず…」



「あん?」



「タバコ…やめろよ。」



「はッ!?」



「…それだけ。」



スタスタ…



最後にそう言い残し、
村木は今度こそその場を去った。



「あいつ…」



村木の独特の雰囲気に呑まれ、


圧倒的な敗北感を味わった日高は、


しばらくその場に立ち尽くす。


投げ捨てられたままの鞄。


その中には確かに、
封の空いたタバコとライターが入っていた。

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