《MUMEI》
3
栞里は少し心配になり、両手で脚本を掴んで読んだ。
「内容をちょっと見せてください」
「見たらキャンセルはできないよ」
「ドギツかったら断りますよ」
栞里は読み進むと顔を赤くした。
「危な過ぎる…」
「こんなのまだ序二段だよ」
「これで序二段なら横綱だったらどうなるんですか?」
「体感してみる?」
「遠慮しときます」
やや警戒心が強くなった栞里に、夜月が笑顔で言った。
「わかった。じゃあ、ベッドに大の字になるだけで縛らないから。それなら安心じゃん」
「あ、縛られてる設定で?」
栞里が無邪気に両手を上げたので、夜月はエキサイトした。
「そう。だから抵抗しちゃダメだよ」
「タオルを取ろうとしたり、縛ろうとしたら抵抗するよ」
口をすぼめる栞里がたまらなくセクシーに映る。夜月の表情が危ないので栞里は不安だったが、日本酒を飲みほした。
「よし、プレイルーム行こうか」
「はい」
恐怖のプレイルームに入り、ベッドに寝る栞里。彼女は顔を紅潮させると、バスタオルを両手で掴んだ。
「最後にもう一度だけ確認させて」
「何?」
「あたしを犯しちゃおうとか思ってないよね?」
「大丈夫だよ」夜月は笑った。「天使の役に成りきって。天使は強気なんだから。悪魔に哀願なんかしないからね」
「えええ」栞里は甘えた。「本気でビビったら哀願しちゃうよ」
「かわいい」
栞里は大胆にもベッドの上で大の字になる。夜月は興奮した。愛しの栞里がバスタオル一枚で大の字。どれだけ夢見た場面か。
「栞里。もう少し脚開ける?」
「天使にこんなはしたないポーズ取らせて、やはり悪魔ね」
笑う栞里。夜月は早くも悪魔に成りきる。
「今何と言った?」
栞里も乗る。
「黙れ。それより手足縛るなんて卑怯だぞ。さっさとほどきなさい!」
「そういう生意気な態度を取るなら天使栞里。こういう卑怯なことしちゃうぞ」
「え?」
夜月がリモコンを向ける。何かと考える間もなく、カシャッと手枷足枷にまんまと両手両足を拘束されてしまった。
「あああ! あああ!」
栞里はもがいたが手遅れだ。
「さあどうする天使栞里。演技を忘れて哀願なんかしたら容赦なくバスタオルを剥がすぞ」
「くっ…」
釘を刺された。しかし、ちゃんと演技をすれば全裸は勘弁してくれるということだろうか。ドS悪魔の思考は読めない。
「あたしを裸にしてみなさい。絶対許さないからね」
「何だその生意気な目は?」
夜月はバスタオルを両手で掴むと、あっさり剥がす。
「嘘!」
取られてしまうと思ったが、結び目をほどいただけでバスタオルは体の上に乗っていた。
栞里は汗びっしょりだ。
「はあ、はあ、はあ……」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫