《MUMEI》
複雑な思い
「そんな…でも息、してないし…。」

「そのうち生き返るさ…」

修二は脱力した様に、掴んでいた加奈子の胸倉から手を離した。


そっか…死んでないんだ。

嬉しいけど素直に喜べない。
だって…


「次は俺らが殺される。」

ボソッと修二が呟いた。


そう、リョウを殺らないと、ここにいる皆が有馬の様な運命を辿る事になってしまうのだ。


複雑。


殺さなければ殺される。


世の中、いつの時代にも理不尽は着いて回るのだ。




『俺が皆を殺してしまう前にお前の手で…』か。


ほんと、勝手な頼み事だよ…








「何してんだよ?」

「リョウを殺す。」


加奈子は修二の顔を見ずに答えた。


「悪いけど、シュウちゃんの夢ってやつ…あれは諦めてね…」


壊された檻の一部を握り絞め、加奈子は溢れる涙を拭い取った。


「私の手で殺す!!」

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