《MUMEI》
4
悪魔の笑みと声で夜月実が迫る。
「栞里。罠にハマったな」
「ちょっと待って」栞里は身じろぎした。「これ、お芝居ですよね?」
「お芝居?」夜月がバスタオルを掴む。「くだらないアドリブを吐いた罪は重い。全裸を晒せ」
「待って!」
待ってくれた。
「やめなよ、ちゃんとやるから」
「何だその生意気な態度は?」
栞里も緊張した面持ちで夜月を睨む。
「裸にされたくらいであたしが参ったすると思ってるの?」
「ほう。言うじゃないか天使栞里。しかし千年もの間俺様はおまえに恋焦がれていたのだ。ようやく手中におさめたのだ。ハハハ。覚悟はできてるな」
そう言うと、またバスタオルを掴む。栞里は体をよじった。
「待ちなさいよ、卑怯よ」
「取るぞ」
「ちょっと待って」栞里は思わず焦りの笑顔。「怖い、演技できない」
「アドリブを吐いたな」
「違うの待って!」
「諦めろ栞里。取るぞ」
「待って、恥ずかしい、無理」
哀願も悪魔には通じないか。バスタオルを剥がされてしまった。
「あああ!」
今度こそ本当に取られてしまった。全裸を晒し、胸も下も手で隠すことができない。これは恥ずかしい。
栞里は真っ赤な顔をしながらも、夜月を睨んだ。
「あたしをどうする気?」
「それでこそ栞里だ。俺様が見込んだ女だけあっていい度胸しておる」
「貴様に誉められても嬉しくない」
「言葉が過ぎるといけないところにキスの嵐だぞ」
それだけは許して欲しかった。
「やめなさいよ、そういうことは!」
夜月は栞里のおなかを触る。
「触るな」
「いいだろ、おなかくらい」
「触るな汚らわしい」
「そういう生意気なこと言うと手が下に移動するぞ」
いきなり内股をまさぐる。栞里は暴れた。
「やめろ、やめろ!」
「おなかとどっちがいい。どっちも嫌だって言ったら一番敏感な箇所にキスの嵐だぞ」
術中にハマっていると知りながらも拒否できない言葉責め。栞里は翻弄されっ放しだ。
「どっちがいい?」
「…おなか」
「ハハハ」
夜月はソフトタッチでおへそ周辺を責める。栞里は腰をくねらせた。
「どうした、おなか弱いのか?」
栞里は唇を噛むと、夜月の手から逃れようと腰をよじる。
「栞里、質問に答えないとくすぐりの刑だぞ」
栞里はくすぐりと聞いて、一種の期待感で胸が高鳴った。意地悪されて興奮したら本物のMだ。
「あたしがくすぐりくらいで参ると思ってるの?」
「ほう」
夜月の目が輝く。栞里の思いがけないセリフにエキサイトした。
「ならお望み通り、おまえの意地と誇りの程度を見てあげよう」
来る。栞里は身構えた。夜月の両手が脇に伸びてきて、強烈なくすぐり拷問!
「きゃははははは、やははははは、やめて! やめて!」
やめてくれた。
「はあ、はあ、はあ……」

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