《MUMEI》
5
一応「やめて」と哀願したらやめてくれる。栞里は夜月の優しさを感じた。
これはプレイなのだ。襲われているわけではない。哀願すれば待ってくれるのだから、多少生意気な態度で挑発しても大丈夫か。
栞里は危ない冒険を続けた。
「くすぐりは卑怯よ」
「栞里」夜月はソフトタッチでおなかを触る。「いい体してるじゃん」
「悪魔に誉められたって嬉しくない」
「本当にいい体してるよ栞里。君はたまらなく魅力的だよ」
耳もとで囁く。本音だろうか。しかし耳にキスしてきたので栞里は激しく首を左右に振った。
「やめなさいよ」
「耳は弱いのか?」
「うるさい」
夜月は胸もソフトタッチ。
「やめろ!」
「栞里。そんな生意気な態度取って無事で済むと思ってるのか?」
ドキッと来たが、ここで怯んではいけない。夜月の怖い顔を栞里は睨み返した。
「何よ!」
夜月はいよいよ秘密兵器を出してきた。ローションの瓶を手にして迫る。
「栞里。これが何だかわかるか?」
「何よ」栞里は焦り顔で聞く。
「これを全身に塗られたら最後、感度が通常の10倍になる媚薬ローションだ」
「やめなさいよ、そういうことは」
たちまち弱気な栞里だが、ドキドキしながら演技する。
「あたしにそんなものは通用しないわ」
「ほう。じゃあ容赦しないぞ」
夜月がおなかに垂らそうとするので、栞里は笑った。
「夜月さんそれは待って」
「夜月さん?」夜月が怖い顔でローションを垂らそうとする。「またアドリブを吐いたな」
「違うの、そのローションって、本当にそうなの?」
栞里が心配顔で質問すると、夜月は悪魔の笑みを浮かべた。
「心配はいらない。おまえが清らかな天使の心なら、この媚薬は通用しない。しかし僅かでも淫らな心があれば、この媚薬ローションは威力を発揮し、おまえをとことん困らせるだろう。ハハハハハ」
「ドS悪魔め」栞里も乗りまくる。「あたしにそんなものは効かないわ」
「楽しみだ」
夜月は媚薬ローションをおなかに垂らした。栞里は唇を強く結ぶ。夜月は両手で全身に塗りまくる。
両手両足に胸、おなか、内股とマッサージしながら塗りまくる。これはきつい。
息づかいが荒い栞里に意地悪を言う。
「どうした栞里。もうギブアップか?」
「だれが!」
「清らかな天使が間違っても仰け反ったらダメだぞ」
「悪趣味ね」
媚薬が効いてきたか。栞里は慌てた。
(あれ、嘘!)
感度10倍は本当だったのか。塗るか普通。そう思っても手遅れだ。
「ちょっと待って」
「栞里。武士の情けで股には垂らしてないが、その調子では、垂らされたら終わるな?」
栞里は胸の鼓動が高鳴る。本気で興奮してきた。
「笑わせるな。あたしはおまえになんか何されたって負けない」
「ほう」
夜月の目が光る。栞里は身じろぎした。

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