《MUMEI》
7
「大丈夫か?」
「ダメ」
ぐったりとする栞里の胸やおなかを、夜月は優しくソフトタッチで円を描く。
「ほどいて」
「栞里」
夜月は全身を触りまくる。
「抱きたい」
「ヤダ」栞里が笑う。
「このまま犯したい」
栞里は身じろぎしながら言った。
「それだけはやめて、抵抗しないから」
夜月は笑顔で栞里を見つめると、手足をほどき、ノーマルな愛撫を始めた。
敏感になっている栞里はすぐに甘い吐息。夜月は優しく優しく愛した。
「…やめて」


二人はベッドに並んで寝ていた。腕枕をされながら、裸の栞里は小声で囁いた。
「帰らなきゃ」
「泊まっていきな」
「いいの?」
「当たり前じゃん」
栞里は静かに瞳を閉じる。夜月実と出会ってから今までの短い時間を、ぼんやりと振り返った。
最初は凄く警戒した。油断も隙も見せてはいけないと気を張った。
しかし、いつの間にかMに開発されていた。まるで催眠術にかかったように、スリルを体感してみたくなった。
「優しくしてね」
瞳を閉じながら囁く栞里があまりにも魅力的で、夜月は感動し、興奮し、生きていて良かったと思った。
「栞里と出会ってから、本当の人生が始まった気がする」
「よく言うよ」
「本当だよ」
「ロマンチストなのね」
「栞里」
栞里はふと思った。初めてファミリーレストランで食事をしながらインタビューしたとき、まさかこんな結末になるとは、全く考えもしなかった。
人生は何があるかわからない。出会いは突然やってくる。

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