《MUMEI》 「始めんぞ?」 「おっす。」 「おぅ。」 構える2人。 スピードという点に関して椎名の実力はこの場にいる全員が知っていた。 3年の部員たち最後の高総体でも、 そのスピードを買われてサイドに起用されているほどの実力。 対して日高は、 全くの未知数。 1・2年の部員たちは関谷からある程度話は聞いていたが、 実際に見るのは初めて。 その男が入部をかけて走るというのだから、 自然と緊張感が高まる。 「よ〜いッ!!」 さっ… 両者とも姿勢はクラウチングスタート。 「スタートッ!!」 ダッ…!! 走り出す2人。 「な…」 (なにぃッ!?) 度肝を抜かれる。 スタート直後、 椎名は日高にリードを許した。 (マジかよこの人ッ!!) 椎名も驚く展開だった。 (関谷さんといい日高さんといい…赤高陸上部はどうなってんだ!?) 誰もが驚くこの状況の中、 椎名からリードを奪った日高本人はその光景以上に必死な状況。 (後ろもほとんど離れてねぇのが伝わって来るッ…!! けど関係ねぇッ!! これはこいつとの勝負じゃね〜んだッ!! 今はとにかく速くッ!! 速く走ることだけ考えろッ!!) 必死に走る日高。 その様子を目にする関谷の手からは、 自然と汗が沸き上がる。 (やるじゃんよぉ日高ッ!!) そして… ピッ!! ドサッ…!! 「はぁ…はぁ…」 そのままの勢いでゴールし、 日高はすぐに倒れこむ。 「はぁ…はぁ…」 直後に椎名もゴール。 差は僅かな物だった。 「はぁ…はぁ…」 「す…すご…」 思わず佑香もそう漏らす。 「はぁ…た…タイムは…?」 「えと…お二人とも… 上位5人の記録に入りますね…」 「マジッ!?」 「はい…えと…」 「日高。」 隣から名前を教える峰田。 「日高さんは、関谷さんに次いで2位の記録です。」 「ほら来たぁぁぁッ!!!!!!」 寝転んだまま歓喜を表す日高。 「椎名くんは4位。」 (まぁ…3年生も合わせりゃそんなもんか…) 「しかし…」 「やっ……たぁぁぁ…」 (またいい人材が入って来てくれたな…) 前へ |次へ |
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