《MUMEI》 エンディング編集部では、朝から大馬編集長が栞里を探して大きい声を出している。 「しおりー、しおりー。あれ、栞里は?」 栞里がすました顔で編集部に入ってきた。 「あ、いたいた。しおりー」 「はい」 「新しい仕事だよ」大馬が満面笑顔だ。「栞里にしかできない仕事だよこれは」 「何ですか?」栞里は身構えた。 「もちろんOKでしょう?」 「内容を言ってください」 「何、僕が大事な女子社員に危険な仕事をやらせると思ってる?」 「はい」 「オオオオオ…」 「白鳥の湖って言ったら断りますよ」 大馬は動けなくなった。 「話は終わりですか?」 「終わってないよう。突撃インタビューだよ突撃インタビュー」 栞里は顔をしかめた。 「またですか?」 「そういうこと言うとまたをくすぐるよ」 「セクハラですよ!」栞里が怒る。 「そう、その調子」 「その調子じゃないですよ!」 睨む栞里を大馬は笑顔で見返す。 「突撃インタビューというより、今回は体験インタビューかな」 もっと危ない。 「で、どういう内容ですか?」 「栞里には催眠術を体験してもらう」 「お断りします」 栞里は背を向けると自分のデスクへ歩き出した。編集長が追う。 「ちょいちょいちょい待ち」 「催眠術なんか掛けられて変なことされたら大変ですからね」栞里はイスにすわった。 「うわあ、何この偏見。そんな悪どい催眠術師ばかりじゃないよ世の中」 栞里はノートとペンを出して別の作業を始めた。 「そういう仕事は全裸にされてもへっちゃらな人に譲ります」 未香子が笑顔で口を挟んだ。 「栞里チャン、もしかして全裸がへっちゃらってあたしのこと?」 栞里は目を丸くして両手を振った。 「まさかまさか。そんなこと思うわけないじゃないですかあ!」 「しおりー。それはミカコに失礼だよー」 「うるさい!」 栞里は本気で怒った。大馬は笑っている。 「編集長。その仕事あたしにやらせてください」 「ミカコー。やってくれる?」 「催眠術なんてヤラセでしょうって挑発します」 「嘘…」大馬の目が犯罪級に光る。 「その代わり二人きりは怖いから助手を付けたいんですけど」 「いいよ、一人選んで」 栞里はそのセリフを聞いて逃げようとしたが手首を未香子に掴まれた。 「ほら行くよ」 「行きません!」 「彼氏ができたからって守りに入るな。女は攻めなきゃ」 「キャア!」 栞里は強引に未香子に引っ張られた。大馬が笑う。 「そうだよ栞里。彼氏できたからって…え、彼氏?」大馬は慌てて追いかけた。「いつ彼氏できたの? ダメだよ彼氏なんかつくっちゃー!」 栞里はエレベーターに押し込まれるが粘る。 「行きません!」 「行くの。大丈夫よ。彼への愛が本物なら卑猥な催眠術には掛からないから」 「かかったら屈辱じゃないですか!」 「負けたら屈辱なんてスリル満点じゃん」 「キャア!」 栞里はエレベーターの中に連れ込まれてしまった。果たして無事に帰還できるだろうか。 END 前へ |
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